ティラノとニワトリ

まずは次の時事通信の記事をご覧いただきたい。


ティラノとニワトリは「血族」=6800万年前の骨から証拠-米研究班

【ワシントン12日時事】米ノースカロライナ州立大学などの研究チームは、6800万年前の恐竜ティラノザウルスの骨からタンパク質を抽出して分析した結果、遺伝的にティラノザウルスがニワトリの「血族」に当たる証拠を得たと明らかにした。研究論文は13日付の米科学誌サイエンスに掲載される。ロイター通信などが伝えた。
 鳥類と恐竜が進化上、近い関係にあるとの仮説は唱えられてきたが、分子レベルで確認されたのは初めて。鳥が恐竜から進化したとの説を補強する材料になるとみられている。


先月もこのブログで恐竜と鳥との類縁性について書いた。(「恐竜と鳥」)
今回の記事は直接ティラノサウルスの骨からタンパク質を抽出し分析を加えた結果を論文にした点が注目される。しかし2つの点が記事からははっきりしない。

1つ目は恐竜の骨からどのようにしてタンパク質を抽出したのかという点である。そもそも化石化した恐竜の骨からタンパク質を抽出することが可能なのか?

次に「遺伝的にティラノザウルスがニワトリの「血族」に当たる証拠を得た」ということであるが、ティラノサウルスのタンパク質と比較検討した「鳥」は「ニワトリ」だけだったのか。それとも複数の鳥のタンパク質と比較検討した結果、ニワトリのタンパク質がティラノサウルスのタンパク質と最も近かったということなのか?仮に後者だとしたらことは重大だ。何故なら、ティラノサウルスは単に鳥と類縁関係にあるというに止まらず、とりわけニワトリと近いということだからである。

この辺のところはオリジナルの論文を読んで見なければわからない。それにしてもこの記事の「ティラノとニワトリは「血族」」というタイトルには噴出してしまった。これではティラノサウルスを「ニワトリ科」(今の分類学ではこんな科名は採用していません。)に分類しなければならないように聞こえるではないか。

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哺乳類型爬虫類

前回は恐竜と鳥について書いた。今回は哺乳類のご先祖について書こう。

多くの人々に哺乳類の祖先は爬虫類であったという認識はあると思う。だが、それが「哺乳類型爬虫類」という動物達だった、ということはそれほど知られたことではないだろう。恐竜について知らない人はいないのに我々人間のご先祖様を知らないとはどういうことだろうか。

そもそも恐竜が出現する前の陸上を闊歩していた動物こそこの「哺乳類型爬虫類」だった。しかし、恐竜が登場することによって陸上の支配権を恐竜に譲り、細々とその子孫が恐竜時代を生き続け、哺乳類への進化の過程をたどることになる。

そして約6500万年前の恐竜の絶滅後、様々な種類の哺乳類が地上に繁栄するようになった。その中から我々ヒトの祖先も登場してくる。それは以前の書き込みで述べたように遥かに後のこと(サヘラントロプス・チャデンシスが登場するのが約700万年前)なのだが。

さて、その「哺乳類型爬虫類」とはどんな動物だったのだろうか?
やや専門的になるが「哺乳類型爬虫類」は「単弓類」として分類されている。頭蓋骨に「側頭窓」という穴が一対存在するグループをこのように呼んでいる。現在生存する爬虫類や恐竜はこの穴が二対存在しているため「双弓類」と呼ばれる。鳥もこの穴が二対存在する。この点でも鳥は恐竜に近いといえる。

専門的な話はこれぐらいにして、代表的な「哺乳類型爬虫類」の復元想像図をリンクするので見ていただきたい。これらを見て恐竜の一種と思われる方が多いのではないか。しかしこれらの動物の中から哺乳類が進化してくることをお知りになったら、少しは彼らに親しみが湧かないだろうか。

ディメトロドン
ペルム紀前期(約2億9000万~2億7000万年前)に生存した背中に大きな「帆」を持つ肉食動物。哺乳類型爬虫類のうち「盤竜類」と呼ばれる古いタイプの動物。背中の帆は体温調節に役立ったと考えられている。

エダフォサウルス
ディメトロドンと同時期に生存した。「盤竜類」だが、こちらは草食動物。ディメトロドンと同様背中に大きな「帆」を持つ。

ティタノフォネウス
ペルム期後期に生存した。「盤竜類」についで現れた「獣弓類」に分類される。この獣弓類の中から哺乳類が進化してくる。

リストロサウルス
中生代三畳紀に生存したディキノドン類に分類される植物食の動物。カバに似た風貌を持ち、「かわいい」という感想を持つ人もある。

トリナクソドン
三畳紀に生存したキノドン類に分類される動物。毛を生やした復元想像図を見るともはや「爬虫類」とは呼びがたい。それもそのはず、この「キノドン類」の中から哺乳類が進化してくる。我々の直系のご先祖様といえるのだ。

恐竜と比べて不遇を託つ「哺乳類型爬虫類」について述べてみた。もう少し我々のご先祖様を大切にしようではないか。最近は彼らを「爬虫類」と呼ぶのをやめて「爬虫類型哺乳類」とする分類法もあるようだ。

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恐竜と鳥

恐竜とは何者か?

恐竜に対するイメージがこの30年ほどで大きく変わってきた。かつては恐竜というと「巨大なトカゲ」というイメージで捉えられてきた。しかしその後「恐竜=恒温動物説」が登場しかつて考えられてきた大トカゲイメージは大きく揺らいでくる。恐竜はトカゲというよりむしろ哺乳類のように俊敏な動物ではなかったか、というものである。

1990年代に入ると恐竜と鳥との近縁性が注目されるようになる。中国で羽毛のある恐竜が相次いで発見され、「鳥は恐竜の子孫」という説が通説に近い扱いとなってくる。

かつて恐竜の復元図といえば体表は鱗に覆われいかにもトカゲ風であったが、最近では多くの恐竜が羽毛で覆われた姿で描かれるようになっている。恐竜の代表として一般の人がイメージするティラノサウルスですらその祖先の化石に羽毛が存在したことから、ティラノサウルス・レックスでも少なくとも幼獣のときは羽毛が存在したと考えられるようになってきた。

では「鳥は恐竜の子孫」という説は正しいのか?ことはそう簡単ではないようだ。「ダイノバード仮説」というものがある。ジョージ・オルシェフスキーのとなえる説である。三畳紀に樹上性の爬虫類が存在し、その後飛行するように進化したものが鳥となり、地上に進出したものが恐竜になったというものである。オルシェフスキーは樹上性の共通祖先を「ダイノバード」と呼んでいる。このダイノバードは恐竜よりもむしろ鳥に近いものという考え方から通説とは逆に「恐竜よりも鳥が先に存在した」と主張した。

「恐竜の子孫は鳥」か、それとも「鳥の子孫が恐竜」か?爬虫類から恐竜が進化していく過程で鳥が分岐したと考えれば前者だろうし、逆に爬虫類から鳥が進化していく過程で恐竜が分岐したと考えれば後者ということになるだろう。この問題は、以前に私がこのブログで述べた「ヒトはチンパンジーから進化した」のか、逆に「チンパンジーがヒトから進化した」のか、という設問と類比的だ。

いずれにしろ、恐竜と鳥が近縁なグループであることは間違いないだろう。前回のブログで取り上げた伊藤若冲の描いた鶴の絵などを見ているとほとんど恐竜そのものではないか、と思えてくる。

最後に最近の記事を転載する。この短い記事だけからでは、「恐竜の子孫は鳥」か、それとも「鳥の子孫が恐竜」か、という設問に解答を与えることになるかどうかは判然としない。今後の研究の進展を注目しよう。


空を飛ぶまで1億年以上=鳥類の身体効率化、祖先の恐竜から-米英チーム (時事通信2007/3/8)

鳥類が空を飛ぶのに必要な効率良い身体構造は、2億3000万~2億5000万年前の祖先の獣脚類恐竜の段階で、全遺伝情報(ゲノム)の縮小という形で準備が始まっていたことが分かった。米ハーバード大と英レディング大の研究チームが、絶滅した恐竜と鳥類、現在の動物のゲノムを分析した成果を、8日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
 ゲノムが小さければ、細胞も小さい。特に血液に酸素を取り込む赤血球は、体積が小さいほど相対的に表面積が大きくなり、運動中の呼吸が容易となる。グライダーのように滑空するだけでなく、羽ばたいて飛ぶ現代型鳥類は約1億1000万年前に出現しており、空を飛ぶには長い「助走期間」が必要だったと言えそうだ。

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